Treatment

有病者歯科とは

超高齢化社会の中では、外来受診の患者様でも多くの全身的既往歴や内服薬を有する方がほとんどであり、場合によっては歯科治療との相互的影響を考慮しなければならない場合も多く、患者様の全身の状態を考えた歯科治療を行う有病者歯科の重要性が高まっています。

糖尿病の患者様の歯科治療で重要なこと

  • 糖尿病になると免疫力や組織の回復力が低下し、細菌に感染しやすく傷の治りも悪くなるため、歯槽膿漏や歯の根っこの病気になりやすく、また重症化もしやすくなります
  • 歯槽膿漏の原因菌から毒素が分泌されてインスリンの働きが妨げられ、血糖コントロールが悪くなります
  • 唾液の分泌が少なくなり、お口が乾きやすくなります
  • お口が乾きやすくなると、歯の表面に歯垢がつきやすくなり、むし歯や歯槽膿漏を悪化させます

骨粗鬆症の患者様の歯科治療で重要なこと

  • 骨粗鬆症になると、骨密度低下の原因である骨吸収を抑えるお薬を投与されます
  • 骨吸収を抑えるお薬により、ばい菌にやられて悪くなってしまった骨も体の中に残り続けてしまいます
  • 吸収されずに体の中に残った悪くなった骨は、ばい菌の格好の餌となり、その周りにさらにばい菌が繁殖して周囲の健康な骨もどんどんやられていきます。これは特に歯を介してばい菌のがたくさんいるお口の中と交通している顎の骨に起こりやすい傾向があります
  • むし歯や歯槽膿漏で悪くなった歯を放置すると、ばい菌にやられた骨が吸収されずに残り、上に述べたように周りにどんどんばい菌が増えていってやがて広い範囲に渡って顎の骨を蝕んでしまいます

心臓に持病のある患者様の歯科治療で重要なこと

  • 弁膜症や人工弁置換術を行った患者様、ペースメーカーを装着した患者様等は、特に抜歯の後、歯を抜いた穴からお口の中のばい菌が入って血流に乗って心臓に届き、悪さをする場合があるので気をつけなければいけません
  • 心臓に入ったばい菌が悪さをした場合、時として致命的な状態になる場合もあるため、抜歯前のしっかりとしたリスク評価とお薬の投与が重要です

当院の取り組み

有病者歯科において、歯ばかり診るのではなく、患者様の全身の状態を考え、それをより良いものにしていく医療の中の一分野として、歯科的な方向からのアプローチを行っていきたいと当院は考えています。そのため当院では、病院でお薬を処方されている患者様には、全身状態も考えて治療方針を決めて行くようにしたいので、お薬手帳もしくは飲んでいる薬をご持参いただき、確認させていただく取り組みを行なっております。特に持病をお持ちの患者様は、お薬手帳と併せて、問診票に治療中あるいはかつて治療したことのあるご病気の記載のご協力をお願いしております。それを確認した上で、必要があれば主治医の先生ともしっかり連携をとりながらご本人の体に負担をかけないように安全な方法で治療法を考えていきます(特に骨の薬を飲んでいたり、注射をしている方は治療時に必ずお知らせください)。

[設備紹介①]血中の酸素濃度を測定するパルスオキシメータ

指先に装置をつけることにより、血中の酸素濃度を測定します。処置中、必要に応じて持病をお持ちの患者様等に装着していただくことにより、患者様のお身体の状態を確認しながらの安心安全な歯科治療が可能になります。

[設備紹介②]バイタルサインの一つである血圧を測定する血圧計

処置中、必要に応じて持病をお持ちの患者様等の血圧を測定させていただくことにより、患者様のお身体の状態を確認しながらの安心安全な歯科治療が可能になります。

ご来院時のお願い

お薬を飲まれている患者様は、飲んでいるお薬やお体の状態によって、歯の治療に際しても気をつけることが変わってきますので、差し支えなければお薬手帳があれば確認させていただければ助かります。

よくある質問

どうして歯の治療で歯とは関係ないお薬手帳を持ってこないといけないのですか?

病院でお薬を処方されている方は、お体の状態も考えて治療方針を決めて行くようにしたいので、お薬手帳を持参していただくか、飲んでいる薬を持ってきてください。特に持病をお持ちの患者様では、口の中を見ることも大事ですが、その前にその方の全身状態を考慮した上で治療をしていく必要があるので、全身状態の把握のためにも、治療中あるいはかつて治療したことのあるご病気の問診票への記載へのご協力と、お薬手帳あれば受診時にご持参いただき、拝見させてください。それを確認した上で、必要があれば主治医の先生ともきちんと連携をとりながらご本人の体に負担をかけないように安全な方法で治療法を考えていきます。このように医科の主治医との必要に応じた連携によって、患者様の歯のみならず全身の健康に寄与できるため、ひいては地域・社会貢献を実現することにも繋がると考えています。

骨の薬を飲んでいると抜歯ができないと聞きましたが、本当ですか?

骨吸収抑制薬(以下ARA)は骨粗しょう症や癌の骨転移などに対し、非常に有効なため多くの方々に使用されています。しかし、最近、ARA使用経験のある方が抜歯などの顎骨に刺激が加わる治療を受けると顎骨壊死が発生する場合があることがわかってきました。
顎骨(がっこつ)はアゴの骨のことで、壊死(えし)は細胞や組織の一部が死ぬことです。顎骨壊死になると、アゴの骨が露出し、腐って痛みと膿が出てきます。
顎骨壊死の1番の問題点は、有効な治療法が未だ確立されていないことです。これはこの病気が最近になって出てきたばかりであるため、まだ現段階ではどう対応するのが一番いいのかあまりまだはっきりと決めきれていないためです(新型コロナウイルスに対して当初どうしたらいいのかよくわかっていなかった時と同じような感じとイメージしていただければわかりやすいかもしれません)。一度発症すると、完全に治癒することは困難で、進行するとアゴの骨折や皮膚を破って膿が出てきます。
ARAは、骨粗しょう症の第一選択薬であり、癌の治療にも有効です。ARA使用中に抜歯を受けると、注射薬で10人1人、経口薬で25~1000人に1人の割合で顎骨壊死が生じると欧米では報告されています。ARAによる顎骨壊死の発生頻度はまれですが、日本は欧米の報告に比べ、発生頻度が高いといわれています。感覚としては、どちらかといえば抜歯によって骨壊死が生じるというよりは、もともとあった骨壊死が抜歯によって顕在化するというイメージの方が正しいような気がします。
これら薬剤に関連した顎骨壊死(Medication Related Osteonecrosis of the Jaw:以下、MRONJ)といいます。MRONJは、全身でもアゴの骨にのみに発生することから、アゴの骨の特殊性と口の中の細菌が影響していると考えられています。MRONJに対する有効な治療法がない以上、予防することがとても重要です。
なお、ARAの休薬・再開などについては、担当(処方)医師と充分相談の上決定し、顎骨壊死の発生予防に努めますが、上記の処置方針に従ったとしても上述のように恐らく抜歯によって骨壊死が生じるというよりは、元々あった骨壊死が抜歯によって顕在化すると言った表現の方が正しいように思うため、顎骨壊死が生じる危険性があります。よって服用歴あれば、今は服用されていなくても、必ずお申し出ください。