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2024.08.04
院長ブログ
初めてお子さんを歯医者に連れてこられる保護者の方へ
歯医者は大人でもできれば行きたくないところ、緊張するところです。
ましてお子さんで初めての場合は、いくら保護者の方と一緒でも、程度の差こそあれ、緊張したり不安だったり、怖かったり嫌がったり泣いたりといったことが当たり前だと思います(たまに初めての時から全然へっちゃらというつわものもおりますが…)。
そのようなお子さんの場合、特に痛みが強くて急いで処置の必要性があるというような場合を除いては、小児治療は様子を見ながら、基本的にはできることから少しずつ始めていき(ドリルではなく、スプーンのような手作業の器具で少しずつ本人の様子を見ながら虫歯をとっていき、応急的に虫歯の進行止めのお薬と詰め物で蓋をするイメージです。この方法は、元々はアフリカ等設備の整っていない場所に駐留していた兵士たちの虫歯治療として使われていた治療方法なのですが、決して完璧な治療ではないですが虫歯の進行を防ぐという意味ではかなり有効な治療方法であるということが歴史的にも証明されています。)、まずは歯医者に慣れることから始めていきます。
間違っても押さえつけての無理な治療は行いません(やっても危ないし治療は不完全になるし、子供はトラウマになって歯医者から足が遠のいて虫歯が人知れず進む一方だし、いいことありません)。詰めたものは基本的には中で虫歯が進まないようにするための応急的な仮の詰め物なので、将来的にまたそこが取れて来たりということがあるかも知れません。
その頃にはお子様もまた精神的に一段と成長されており、また前にもきたことのある場所、初めての歯医者ではないという多少の精神的余裕から、あるいはしっかりとした治療ができるようになっているかも知れません。治療がある程度できるようになっていれば治療をして行きますし、少しまだ難しそうであれば、またなかの虫歯をスプーンでとって仮の詰め物をして行き、虫歯の進行を極力防ぐ形をとります。要はお子様の心の準備ができるまでの時間を稼ぐための処置をしていくようなイメージです。
そうすることで、一番はじめの時には大泣きしていたようなお子さんでも、想像もできなかったほど、最終的にはきちんと治療が上手にできるようになる子供達を自分はこれまでにたくさん見てきました。
子供というのは、まさに無限の可能性を秘めていると感じる瞬間で、お子さんの頑張りや成長を思うと、歯医者としては涙が出そうになるほど嬉しい瞬間でもあります。これは年齢的なものではなくて、身長の伸びるのが早い子、少し遅い子がいるのと同じように、お子様一人一人のペースがあるので、一概に何歳で何をする、といったことは言えません。しかしお子さんの歯医者さんで治療を頑張るんだという心構えができるまで、当院ではお子様一人一人のペースに合わせた無理のない治療を寄り添いながらしていければ、そしてその結果、歯医者を好きになってくれなんて贅沢は言いませんが、少なくとも嫌いな場所、怖いところではないとは思ってもらえるようになれればなと考えています。
ただし急性期でどうしても早期の治療介入が必要な場合は、安全な処置が可能な専門の病院に紹介します。また、特に5歳くらいまでのお子さんというのは非常にフレキシブルなものでもありますので、一度できたからもう大丈夫、ということはなく、その日の体調や機嫌によっては前回できたことが今回はできない、ということもたまにあります。
そのような場合は無理をせずにできる日に改めてという形を取らせていただくことがあるかもしれませんが、お子様と信頼関係を築いて円滑に最後まで歯科治療を進めていくためには致し方ないことと考えておりますので、ご理解いただけましたら幸いに存じます。
そして、もし歯の治療を前回よりも少しでも頑張ることができたら、その日はたくさん褒めてあげてください。保護者の方に褒められることが、何よりお子さんにとっての一番の励みと力になります。
治療の方法に関しましては、まずは保護者の方にももちろんご説明し、同意をいただいた上で治療に入りますが、それと同時に当院では治療を実際に受けられるお子さんのお気持ちも大切にしたいと考えております。例えば治療に際してどうしても麻酔の注射が必要な場合、いきなり当日にそれを言われても、気持ちの準備ができていないこともままあります(これは大人だってそうです。僕もいきなり病院に行って注射をしますと言われたらドキドキします)。そのような場合、お子さん本人が今日はダメだけど次回は頑張る、という約束をしてくれるなら、無理にその日は麻酔をせずに、麻酔をしないで済む別の治療をさせていただくこともあります。
お子様もやはり小さいといえど一人の人格を持った人間であるので、その気持ちを無視して治療を行う、ということは、当院ではあまり行いたくありませんし、一人の人間としてお子様のその気持ちも大切に尊重してあげたいと考えています。それを行うことによって、ひょっとしたら保護者の方には例えば一回来院回数が多くなる等してご迷惑をおかけすることもあるかと思いますが、極力お子様のお気持ちも尊重してあげた上での安心安全な、そしてお子様と心の通い合った歯科治療を心がけて参りたいと考えておりますので、ご理解いただけましたら幸いに存じます。
お子様の方も、自分の気持ちを尊重してもらえたらやはり人として嬉しくなって、また何より自分のこととして真剣に歯のことも考えてくれるようになり、無理やりその日に麻酔をして治療を行うよりも、しっかり歯の治療や家での歯磨きを頑張ってくれるようになるものだと考えています。