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2024.10.29

院長ブログ

知覚過敏について

知覚過敏について

知覚過敏の仕組みと原因

歯の表層(一番外側の面)はエナメル質という体の中で一番硬い組織で覆われています。このエナメル質には神経はないので、歯の表層がこれで覆われているうちはいくら冷たいものを飲んだり食べたりしても、歯がしみることはありません。一方このエナメル質の内側には象牙質という、エナメル質よりは少し柔らかい組織があります(余談ですが、柔らかいので、ここに虫歯が進むと一気に中で広がっていきます。見た目ではそんなに穴が大きく開いていないように見えても、実は中でかなり虫歯が進行していた、ということがよくあるのは、歯の表面のエナメル質は硬くてなかなか虫歯が進みにくいのに対して、中の象牙質は柔らかいのであっという間に虫歯が進んでいくためです)。象牙質のさらに奥には歯の神経があり、その神経から象牙質に向かって、たくさんの管が伸びています。

したがって、虫歯や歯磨きのしすぎ、歯ぎしりなど何らかの原因で表面のエナメル質が部分的にでも無くなってしまい、中の象牙質が口の表層に出てきてしまうと、そこには神経からの管が無数に伸びて歯の神経とつながっているので刺激に対して敏感となり、冷たいもの等の刺激が管を介して神経に伝わり、きーんとしみたりすることが起こってきます。これが世に言う知覚過敏です。

その他の原因

虫歯だけでなく、例えば歯をかぶせるためにこのエナメル質を削った場合も(ブリッジの場合によく削ることがあります)、神経が生きている歯であれば削った後や歯をかぶせた後も、少し感じるものが出てくることもあります。

また、歯槽膿漏で歯茎が痩せてしまうと、歯茎の中に入っている歯にはエナメル質が無く、直でそのまま神経の管が走っている象牙質であるので、これが直接口の中に露出してやはり感じやすくなり知覚過敏を生じます。生えたての大人の歯では、この管が通常よりも太くなっているため、刺激に特に敏感で超知覚過敏みたいな状態となっています(歯の成熟とともに、だんだんこの管は細くなっていき、過敏さも少しずつ減っていきます。言うなれば歯の神経の思春期みたいな状態です。生えたてのうちは何でもかんでも過敏に反応して、触れるもの皆傷つける、みたいに騒ぎ立てるのですが、それも成長とともにだんだん落ち着いてくるみたいなイメージです)。

歯のしみどめのお薬について

よく言うしみどめのお薬は、この露出した象牙質に開いている神経につながる無数の管の入り口を塞いで、刺激を神経に伝えにくくするためのものです。塗った直後はお薬によって神経の入り口は塞がれるのですが、その後ものを食べたり飲んだりすると、どうしても部分的にお薬が剥がれていくので、だんだんとまた症状を感じるようになることもあります。そのため、何度かお薬を塗る必要が出てきますし、仮に塗ったとしても全ての管の入り口を塞ぐことも難しいので、症状は軽くなるけれども多少は感じるものが残ることもあります。これは神経の生きている歯に被せ物を入れるために削った場合も同様で、被せ物で露出した神経の管は物理的には塞がれますが、被せ物のほとんどは(表面は白でも)中が金属でできているので、どうしても熱を伝えやすく、その刺激が歯の形を作ることで露出した象牙質の神経の管に伝わると、やはり少し感じるものとして伝えられることがあります。

※虫歯でなくて歯がしみている場合はしみどめでいいのですが、虫歯で歯がしみていて虫歯が神経近くまで深くある場合には、基本的には中の神経の処置をする形となります。神経を取りたくないというお気持ちはよくわかるのですが、虫歯でしみているということは神経が虫歯から絶えず刺激を受けているということになるので、その状態を長期間続けると、いざ処置をしようとしても麻酔が効きにくくなったり、あるいは処置をした後もしつこい痛みが残ったりすることがあります。そうならない前に、神経のダメージが少ないうちに処置をしてあげる方が、結果としていい方向に向かうことが多いです。