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2024.10.05

院長ブログ

訪問患者の動揺歯

訪問患者の動揺歯

訪問診療で拝見している患者さんで、稀に動揺の著しい歯が口腔内に残って存在していることがあります。基本的にそのような歯の場合は、患者さんの全身状態が許すのであれば抜歯が望ましいのですが、得てしてそのような方はご高齢の方が多く、抜歯のご提案をするとご本人あるいはご家族の方より、こんな歳になって歯を抜くのは嫌だ、かわいそうだというお話を承ることがあります。

そのお気持ちは十分にわかりますし、いくら動きが著しくあまりもう歯としての機能をなしていないものであるとはいえ、患者さんにとっては大切なご自身のお身体の一部でもあり、できることであれば自分も人としてその想いをなんとか叶えてあげたい気持ちになってしまいます。

しかし心配なのは、もし仮にこの動きの著しい歯が何かの拍子で自然に抜けてしまった場合に、多くはそれは食事中に起こったりするのですが、歯が抜けた!とご自身で気付けてうまくお口の外に抜けた歯を出せたらいいのですが、場合によっては気付かずに食べ物と一緒に飲み込んでしまって、それが誤って肺に入ってしまって肺炎の原因となってしまう可能性があるということです。場合によっては喉に引っ掛けてしまって、呼吸苦の原因となる可能性もゼロではありません。

一度肺にはいってしまった歯は、基本的には自然に出てくることはなく、取り出すためには全身麻酔で手術をしたりとかなり大事になってしまうため、そうならないようにするために、まだお口の中で見えているうちに早めに残念だけど抜いてあげて、そのリスクをゼロにしてあげる方が、患者さんにとっては後々のことを考えると安心なのではないかと考えて、そのような場合には抜歯をご提案させていただく場合があります。

訪問診療は確かに器具機材環境に制限があり、できることが限られていますが、とはいえ、歯科医師としてお口の中を拝見させていただいている以上は、ただ歯磨きをするだけの訪問ではなく、しっかりとそのような今後のリスク等も踏まえた上で、できる方法を考えながらの治療のご提案を、自分の力の及ぶ限りはさせていただければと考えています。